Buddy Guy/バディ・ガイB〜待望の来日


バディ・ガイが5月の下旬に来日するという情報を知ったのは3月中旬だった。
昨年の4月、シカゴにあるバディのお店
「バディ・ガイズ・レジェンズ」に行った時のことを懐かしく思い出す。

早速Tさんに連絡をとって、お互いに日程の調整を試みた。
バディ・ガイがヘッド・ライナーを務める日比谷野外音楽堂の
ジャパン・ブルース・カーニバルは
土・日開催のためTさんは仕事があって無理。
ということは6月3日金曜日の「渋谷クラブ・クアトロ」しかない。

4月に入ってTさんから連絡があり、
6月3日なら行けるということだったので
私も何とか都合をつけて一緒にバディのライヴを観に行くことにした。
急いでチケットを買いに走ったが、その時点で整理番号は339番。
渋谷クアトロでのバディ・ライヴは全席立ち見で、チケットを買った順、
つまり整理番号順に入場できるというシステムになっている。
キャパは700名らしい。
目の前でバデイを観ることはできないとわかり、その時少々落胆した。

私もTさんもバディ・ガイだけが目当てだったので
バディのワンマン・ショーを
お手頃な大きさのライヴ・ハウスで観れることにこの上もない喜びを感じていた。
「あのエネルギッシュなギター・プレイをもうすぐ体験できる!」
そう思いつづけながらライヴの日を迎えた。

私は当日Tさんに打診した。
「すでに入場の順番は決められているようですが、少し早めに行きませんか?
午後6時開場で7時開演となっていますが、
私は開場の30分前には現場に着いていたいと思います。」
その時Tさんはもう観る場所が決まっているのだから、
そんなに早く行かなくてもいいのではと思ったそうだが、
すぐに私の意見に賛同してくださった。

当日、5時半頃クアトロに行くとすでに階段に沿って
70人ぐらいの人が並んでいた。
女性は8人に1人ぐらいの割合で
20代・30代の男性の姿が目立った。
Tさんにとってこの日がブルース・ライヴ初体験の日となる。

開場時間になった時、係員の人が階段のところに降りてきて
大きな声で言った。
「これから整理番号順に入場してもらいます。
まず1番から20番までの整理番号をお持ちの方、
上に上がってきてください。」

私達は300番代なので、入場が許されるのはまだまだ先だと
思っていたらアッという間に番号が呼ばれた。
せっかくチケットを早く買っても開場の時間が来た時に
その場にいなければ前方で観ることができないのだと知った。
きっと仕事の関係で早く会場に来れない人々がたくさんいたのだろう。

階段の上の方に並んでいた私達はステージのほぼ中央、
前から3列目、手を伸ばせばバディと握手できるかもしれないという
好位置に立つことができた。
会場の後ろの方は一段高くなっており、
立ち見のスペースを取り囲むようにテーブルと椅子が用意されている。
すでにその席に座ってくつろいでいる人も何人かいた。

お代わりの飲み物を取りに行きたくても、
立ち見フロアーには椅子がないため場所を確保することができない。
1杯のビールで1時間立ち尽くしながら
私達はひたすらライヴが始まるのを待っていた。
もう心の中はドキドキである。疲れたなんて言っていられない。
ステージを見上げるとヴォーカルのマイク・スタンドは1本しかなく、
そこから視線をずっと下にたどりながら床を見ると
深紅に白の水玉の入ったバディ専用のフット・ペダルを発見した。
さすがバディ・・・ペダルまで水玉だったとは!Tさんと苦笑し合う。

7時の開演時、ホールは満員電車状態となっており
バディの登場を待ちわびる熱気で一杯になっていた。
ドラム、ベース、サイド・ギター、キーボード、サックスという
バック・メンバーが出てくると会場からどよめきが起こり、
興奮の渦に包まれながら演奏が始まる。

イントロはなぜかアース・ウィンド&ファイヤーの
『ゲッタウェイ』らしきメロデイー。
と思ったらいきなりブルース・ナンバーにすりかわった。

ベーシストはOrlando Wrightという人で、
ベースの音色は低くタイトでシャープな感じ。
Orlandoからは真面目な雰囲気が漂っていた。きっと服装のせいだろう。
サイド・ギタリストのRic Hallと仲良く並んで4弦ベースを弾いていた。
ドラマーはTim Austinで、キーボードはMarty Sammon。
サングラスをかけ、ゼブラ柄のサックスを抱えたスキン・ヘッドの
Jason Moynihanがルックス的にかなり目立っていた。

多分キーボードのMartyだったと思う。
彼が観衆を煽るようにバディの紹介をした。
今日の観衆のノリはとにかく凄まじい。
ブルースというよりはハード・ロックのライヴを聴きにきているみたいだった。

バディの名を数回Martyが叫んだ直後、
みんなの視線は向かってステージ左側の後方にある通路に集中した。
私も固唾を飲みながら見つめた。
その数十秒後にバディがキャラメル色のフェンダー・テレキャスターを抱えて登場!

その途端、会場全体から大歓声がこだまし、
後ろから一気に押されて私は前から2列目になってしまった。
ステージは手のひじがおけるぐらいの高さで、
かぶりつきの人達はお腹をステージの側面に付け、
後ろからの圧力に耐えながら観ているといった状態。
2列目といってもバディとの距離は最前列の人達と
ほとんどかわらない。

今までの人生で、世界的なビッグ・アーティストのライヴを
こんな至近距離で観たことなど一度もなかった。
私の心は、完全に舞い上がっていた。

<05・6・14>